特別連載コラム 「CPUアップグレードのツボ」
CPUアップグレードカードの選び方 Power Mac G4 編-1 (2006.9.2)


 数あるMacのアップグレードの中で、何が一番効果的?よくある御質問です。それは、アップグレードの目的次第ではあるのだが、誤解を恐れずに断言すると、CPUアップグレードが一番効果的である。ビデオカードのアップグレードは描画性能の改善以外の効果は皆無だが、CPUはコンピューターの中枢、あらゆる処理を一手に引き受けており、この部分の性能が上がるとおよそ全ての部分の速度が劇的に向上する。また、先に出たビデオカードをアップグレードしても、CPUが遅い場合その性能を十分引き出せない場合がある。他のアップグレードの性能を引き出す上でも、CPUアップグレードは効果的である。マシンの性能を上げたいとき、最初にやるべきはメモリ増設、次に考えるべきはCPUのアップグレードである。
Power Mac G4用のCPUアップグレードは、最も種類が多い激戦区である。それだけ効果の高い、満足行く結果が得られるということの裏返しと言える。新機種にした方が、コストパフォーマンス上有利ではという声もあり、それも頷けるケースも多い。しかし、現行機種がIntel Mac化された今、Power PCマシンをアップグレードする意味は大きい。Intel Mac用ソフトのユニバーサリバイナリ化にはまだまだ時間がかかりそうだし、OS 9用のソフトはIntel Mac上では使用できない。PCI Express用の拡張カードの選択肢はわずかで、PCIカードの充実ぶりとは比べようもない。

一口にCPUアップグレードと言っても、色んなメーカーが、色んな仕様の製品を出しておりどれを選べば良いかわからないと言った質問を多くいただく。そこでこのコラムでは、目的と予算に応じてどの製品を選ぶのがよいか解説していく。まずは、Power Mac G4編である。
今回は、CPUアップグレードカードのスペック上の注目点を説明する。

 

1. CPUクロック

  機種選びでも最もなじみ深い性能の指標である。1秒間に何回CPUがお仕事をするかという 数字である。1GHzなら10億回。CPUはとても働き者である。単純に言えば、クロックが高いほど性能は高い。しかし、性能の要因はこれだけではないので注意が必要。
CPUアップグレードカードの動作クロックは、2006/9/1 時点で7447 CPUでは2GHzが最高、デュアルは1.8GHzまで。 7455 CPUでは1.5GHzが最高となっている。

CPUは高クロックほど高性能。でも、それだけじゃない。

2. シングルかデュアルか

    Intel Macではデュアル(コア)が標準的となった。やはりデュアルは偉いのか? 確かに同じCPUでシングルとデュアルを比べれば、当然ながらデュアルの性能が高い。しかしその性能差は2倍には遠く及ばない。これはその処理がどれだけデュアルに最適化されているかで大きく異なるので、一概にデュアルはシングルより何パーセント性能が高いと言うことはできない。しかしこれではよくわからないので、敢えて言ってしまうと、OS X上で平均しておよそ30パーセント程度と言ってよいと思う。通常、デュアルのカードとシングルのカードの価格差は50パーセント以上あるので、デュアルは割高と言うこともできる。しかし、最高性能を得るための有効な手段というのもまた事実だ。
これがOS 9上の話となると、ちょっと違ってくる。OS 9ではシステム自体デュアルに対応していない。対応しているのは、Photoshopなどごくわずかなアプリケーションのみである。従って、使用するのがOS 9でPhotoshopも使わないと言うことであれば、デュアル化の意味は皆無となる。
そして、Giga DesignsとPowerLogixのデュアル 7447 CPUカードは、OS 9上ではシングル動作となる。SonnetのみがOS 9でのデュアル動作に対応している。

シングルとデュアルの性能差は、30%程度。
コストパフォーマンスならシングル、最強を目指すならデュアル。

>3. L3キャッシュの有無

 

 最近主流となっている7447系のCPUは、L2キャッシュ512KBのみで、 L3キャッシュは搭載していない。 一方一世代古いCPUの7455系には、 L2キャッシュ256KBと2MBの L3キャッシュを搭載している。 実はこの L3キャッシュの有無は性能上とても影響が大きい。特に画像編集などの重い処理でL3キャッシュは有効だ。L3キャッシュでは瞬時に終わるフィルター処理が、同クロックのL3無しではレインボーマーク待ちになるなど、大きな使用感の差が発生する。
このように重いと言っても、すぐに終わるような処理ではL3の効果は大だが、何時間もかかる3DレンダリングやCDのエンコードなどではあまり差はでない。このような処理では、ほぼクロック通りの性能差になる。
そんなわけで、L3の効果は何パーセントと一概に言い切ることもできないのだが、またまた敢えて言ってしまおう。L3無しの7447 G4/1.8GHzの性能は、平均的にL3付きのの7455 G4/1.4〜1.5GHz 程度に相当する。25%程度の効果と言っても良いだろう。
尚、7447のL2キャッシュを1MBに増強した7448というCPUが存在する。最後のPowerBook G4に搭載されると言われながら、結局は見送られMacでの使用実績は無い。もし、7448を使用したCPUアップグレードカードが出れば、7447にすべきか7455にすべきかとジレンマに終止符を打つことができると言われ、登場が期待されている。しかし、現在まで登場には至っていない。高コストが原因と言われ、仮に出たとしてもかなり高価になりそうである。

(2007/4/3追記)ついに7448 CPUを搭載したG4カードが、Newer Technology から登場した。

L3有無の性能差は、25%程度。ややクロックの低い7455も性能に遜色はない。

4. CPUの種類と対応OS


7447CPUと7455CPU
 前の項でも既に出てきたが、現時点ではCPUの種類はL3無しの7447とL3付きの7455の選択になる。高クロックの7447か、クロックはやや低いがL3効果の高い7455という違いである。
7455には性能上の差の他、セットアップが簡単というメリットもある。7455はPower Mac G4にもOS 9時代から採用されていたCPUであり、本体、OSとも標準的にサポートしていると言える。従って、基本的にはハード的な取り付けをすればお終い。唯一、AGP ̄Digital Audioの機種では、純正のFirmwareアップデートが必要だ。もっともこれは、純正CPUであってもアップデートは推奨されており、CPUアップグレード以前にやっておくべき内容だ。
7447CPUはPowerBook G4アルミから使われ出したCPUで、OS自体10.3.5以降しか対応していない。それ以前のバージョンのOS Xを使うことは不可能だ。またPower Mac G4にも採用されたことがないCPUであるため、ハード上の取り付けを行っただけではCPUが認識されず、空しく電源が入るのみで全く起動できない。そこで必要になるのが製品に付属しているソフトを使用して、Firmwareのアップデートを行うことだ。パッチ当てとも呼ばれている。

この作業法、メーカーによって異なっている。SonnetはOS 9上からのインストール(2007/6追記;OS Xからのインストーラーも追加された)、Giga DesignsはOS X上からのインストール、PowerLogixは付属CDからの起動と三者三様。しかも互換性がないのがやっかいだ。たとえば、Sonnetのパッチを当てた本体にPowerLogixのCPUを取り付けても起動しない。それだけではなく、パッチのインストールもできない。一度Sonnetのソフトを使ってパッチをアンインストールする必要がある。本体が中古品の場合、過去のFirmware履歴がわからない場合があるので、注意が必要だ。Firmwareのパッチインストールは、ドライバーソフトのインストールほど簡単ではない。 プログラマーボタンを押しながら電源スイッチを押し長目のビープ音を確認すると言った、やや面倒な作業が含まれる。 これは、Firmwareが保存されているフラッシュメモリの書き込みロックを解除するための作業だ。一度限りの作業だが、これを手順通りにやらないと決して起動しないので慎重にやる必要がある。
実際この7447系のCPUカードが発売されてから、サポート依頼が非常に増えている。「カードを取り付けましたが、全く起動しません。不良でしょうか?」という内容である。多くの場合、Firmwareのパッチをインストールしていないか、インストール方法が不適切だったのが原因となっている。大抵は丁寧に方法を説明することで解決するが、どうしても理解いただけず苦労する場合もある。

7447はFirmwareのアップデートが必要。やや面倒だが、最初の一回のみ。

5. OS 9対応

 
4で説明したとおり、7455はOS 9.2.2にネイティブ対応しており、手軽に利用できる。7447 CPU の場合、OS 9自体がサポートしていないので、ここでもOS 9用のパッチが必要になる。このパッチ、Sonnetの7447 CPUではFirmwareに、Giga DesignsとPowerLogixではPRAMにインストールされる。 このPRAM上へのインストールが曲者である。PRAMというのは比較的簡単にデーターが失われてしまう。PRAMのリセット方法で、command, option, P, R を押しながら起動というのはご存知かと思うが、この方法でパッチは消去される。 つまりOS 9起動不能になってしまうわけで、パッチの再インストールが必要になる。これは常時OS 9を使う方にとっては、かなり面倒な仕様と言える。

OS 9の常用には7455 CPUがお勧め。7447ではSonnetがお勧め。

 

と説明してみましたが、ベンチテストなどの数字で比較する方が一目瞭然という向きもあるだろう。こちらの結果がかなりよくまとまっているので、参考になる。ただ、ベンチはあくまでベンチなので、あくまで参考と考えていただきたい。
以上、CPUアップグレードカード選びのポイントとなる点を列挙してみた。次回は、具体的なケースでどの製品がお勧めかという観点で進めてみる予定である。